統合失調症とは
17~18歳での発症が多く、統合失調症の原因は「脳の発育異常」にあります。通常、小学生までは自分中心、自分だけの世界だったものが、思春期になると、周囲に目が向くようになり、「気恥ずかしい、人の視線が気になる」などの感覚を持ちはじめます。一般にいう、多感で気難しい年ごろです。これが、脳の発育に異常があると、行き過ぎた異様な感覚を生じますが、それが統合失調症です。異様な感覚がまず出て、それが元で被害妄想や幻聴が出て、最後は活気の障害や思考力の低下が目立ってくる、という経過をたどります。ただ、初期から異様な感覚も、被害妄想や幻聴も、活気の障害や思考力の低下も、大なり小なりは存在します。また、末期でも、異様な感覚、被害妄想や幻聴は、完全になくなるわけではありません。ほか、大体の症状は治療によりある程度、回復が期待できますが、活気の障害や思考力の低下に関しては、後遺症の一種で、なかなか治らない事が多い症状でもあります。
統合失調症初期
今までとは何かが違う、異様な感覚
実際に経験した方はこの異様な感覚を「何か良くない事が起こりそうな、どうにも嫌な感じがする。何か怖い感じ。」や「周りの人の様子がおかしい。よそよそしような、わざとらしいような気がする。」など「人の気配がする。プライバシーがない、全部見られている。」といった表現をされます。この異常感覚が続くと、本人の発想としては、「盗聴・盗撮、ストーカーされている。」や「皆に嫌われている。いじめにあっている。」「何か大きな事件に巻き込まれたんじゃないか。」といった事を考えるようになります。ただ、一方では「心当たりもないし、思い過ごしかな。」と、初めのうちは確信が持てずにいて、あえて自分から変に思われるような事は言わないので、一見すると普通の人に見えます。
統合失調症中期
初期から病状が進んで、被害妄想や幻聴が目立ってくると、人から見て「あれ、変わっているな。」と思うような行動をとるようになります。
被害妄想
異様な感覚が続くと、次第に自分の感覚に確信を持つようになり、自身の異様な感覚に基づいた発想を、進んで人に話すようになります。また、不快な感覚が続くために、常に緊張を強いられていて、何事に対しても「疑り深く、不信感が強い」状態となります。この頃になると、よく分からない事で急に謝ったり、通行人や近所に苦情を言ったり、あるいは警察に相談に行ったりするようになります。これが被害妄想です。
- 被害妄想例
- 家に帰ってきて部屋の電気がついていた時に、普通は「消し忘れたんだろう」ぐらいにしか思いませんが、異様な感覚があって、「何かおかしい、そのうち何かあるに違いない」と常日頃から考えているような状態だと、部屋の電気がついていただけでも「おかしい、これは誰かが家に忍び込んだ形跡だ」と直感的に思ったりします。
- 本人の発想
- 自分は臭いから嫌われやすい。
相手の気分を害したようなので、あやまりたい。
自分は家系が特別だから、こんな目にあう。
財産や命を狙われている。
幻聴
何か考え事をするたびに、他人の声や耳障りな音がするようになります。いつも不安で夜も寝られないなど、心身の疲労が極度に達すると、脳は自分の思考内容や過去の記憶と、外部からの情報とを混同するようになります。自分自身の考えたことが、自分のものでないような錯覚に陥って、実際は自分が考えた事なのに、今、外で誰かがそう言ったように感じてしまうというタイプの幻聴や意味のある言葉ではなく、音楽や雑音、物音が聞こえるタイプのものもあります。
- 幻聴:人の声
- のどが渇いたときに「それならお茶でも飲んだら」と、隣の家の人がつぶやいた。
トイレに行ったときに「またトイレに行くの?」と、通行人がぼそっと言った。
おかしを食べたときに「食べ過ぎや、また太るぞ」と、友人が語りかけてきた。
- 幻聴:耳障りな音
- 歌のリズムが頭から離れない。
セミの鳴き声のような「ジー」という耳鳴りがする。
さあやろうと思ったときに「ドンドン」と壁を叩いたり、急に子供が騒ぎだしたり、大きな音を出して邪魔してくる様に聞こえる。
同じ幻聴でも、人によって感じ方は様々で、「あれは自分にアドバイスしてくれているんだ。」と好意的にとらえる人や「批判したり、悪口を言われている。」と不快そうに言う人もいれば、「誰もが自分のことを知っている。どこに行っても噂される。有名人だから、仕方ない。」と上機嫌に言う人もいます。これに関しては、もとの性格が温厚だと、幻聴の内容も温和で、好意的にとらえる人が多いですが、もとの性格にとげがあるような人は、幻聴の内容も批判的で、不快な内容の幻聴が多い傾向にあります。
統合失調症末期
被害妄想や幻聴が長引いて体力的に消耗し、活気の障害や思考力の低下を生じて、論理的な判断が難しくなります。
活気の障害
大体は、「表情が硬く、自然な笑顔や若々しさがない。うつむき加減で、受け答えもそっけない。興味・関心の対象が狭く、いつも同じ事を気にしている。」といった様子になります。これは、被害妄想があって、毎日、人を疑ったり、それでずっと怒っているのは疲れますし、幻聴があって、何か考え事をするたびに人の声や耳障りな音がするのも辛いでしょうから、最後は疲れてしまって、人と関わることがなくなります。「家族以外の人とは関わりを持たない。昼間でもカーテンを閉めて、ずっと部屋に篭っている。髪はボサボサで、服もろくに着替えない。」「近寄りがたいような、独特の雰囲気を醸し出している。急にニヤついたりして、表情がその場にそぐわない。独り言が多く、よく分からない事をブツブツと言い続けている。」など終始マイペースで過ごし、ほとんど何もしないか、逆によく分からない事をずっと繰り返しているか、そのどちらかになります。ここまで病状が進むと、人を疑ったり、それで怒ったり、そういうエネルギーの必要な事はしなくなり、被害妄想や幻聴は前ほど目立たなくなってきます。
思考力の低下
何でも思いつきで、物事の関連性を考えなくなったり、推理、吟味、検証というものがなく少し考えて答えるような時に独特な解釈をするようになります。言葉遣いや文章も独特になり、言いたい事は何となく分かるが、少し変わった表現を使い、さらに病状が進むと本人にしか意味の分からない事を言うようになります。
- 思いつきで、物事の関連性を考えない
- 話の趣旨とは異なる、昔あったどうでもいいようなことを延々と話す。診察で体調がどうかを尋ねても、息子の結婚式の段取りについて、特に結婚の予定もないのに延々と話す。結局、何を言いたいのかが分からない。
- 推理、吟味、検証というのがない
- 幻聴で隣の家から声がした際。壁を隔てて何mも離れた所での会話が、内容まではっきり聞き取れる事に違和感を持てない。ことわざの意味が分からなくなり、「とらぬ狸の皮算用」を「トラとタヌキが・・・」、「猿も木から落ちる」を「猿が木に登ったから」と答える。
- 言葉遣いが不自然になる
- 「右脳梗塞を発症しました。」→「頭痛」のことで、特有の表現を使用している。
「体調はパーフェクト、完璧です。」→「体調はいいです。」「はい、元気です。」など、平均的な回答とは違う、「おや?」と思うような内容。
- 本人にしか意味の分からない事を言う
- 「牛の病院だから殺されます。」
「セミサンヨウセイ、職員さん、心のフルイ人だめ。」