都建幸会 心療内科・精神科

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不眠症・うつ病の薬

不眠症・うつ病の代表的な薬のご紹介

アモキサン

「アモキサン」 

三環系抗うつ薬。表情がなく反応も鈍い、見るからに疲れ切った者に良い。強力な薬で典型的なうつ病、中でも重症うつ病や亜混迷に使う。分量はアモキサン(25)2~3Tで1日1回、飲むのは朝でも夕でも良い。少し口の渇きと便秘はでるが、それ以外の副作用、例えば眠気などはない。数日続けると意欲が出て、表情や反応が改善してくる。逆に、薬があわなければ、飲んだ直後1~2時間で無性にイライラしたり、吐き気や頭痛が出たりする。その際は中止する。大体、意欲の障害が見た目にはっきりしない者、不安感が強く訴えの多い者、イライラする者や不眠が重症の者には不適切である。アモキサンはイライラを通り越して、疲れ切った状態に使う薬で、まだ感情や表情があり、よくしゃべる者には不適切である。吐き気や頭痛の副作用が出て、かえって病状を悪くする。一番最初に飲む量は、「アモキサン(25)1T朝」、あるいは「アモキサン(25)2T夕+マグミット(500)1T夕」である。分量調整に関しては、少しのどの渇きと便秘がでる量が最適量。口の渇きがひどい場合は減量し、全く口の渇きがない場合は増量する。便秘に対しては、マグミットやセンノシドなど便秘薬を併用する。大体、アモキサン(25)1T~4Tで決着する。アモキサンと似た薬では、ノリトレンやトフラニールがある。アモキサンより弱いが、主に意欲やエネルギーを改善する。
「三環系抗うつ薬」
旧来からあるうつ病治療薬。アモキサン、アナフラニール、トフラニール、トリプタノール、ノリトレン、アンプリット、プロチアデンなどある。意欲やエネルギーを出す作用が強い。眠気はあまりなく、少し口の渇きや便秘は出る。トリプタノールは例外的に眠気のある薬。三環系はあわなければ、イライラ感や落ち着きのなさ(躁転)、吐き気や頭痛が出る。
トリプタノール

「トリプタノール」

三環系。不眠がちで倦怠感が強く、肩こりや頭痛が慢性的にある者に良い。割と眠気がくる薬で、よく眠れるようになるので、倦怠感や体の痛みも回復してくる。薬の性質上、不眠が大したことない者には、日中まで眠気やだるさが残り、かえってしんどい。10㎎など少量で眠気やだるさが残るならトリプタノールはあきらめる。意欲の面では確かな効果はあるが、さほど煽らないので、無性にイライラすることは少ない。抗うつ薬の割に鎮静的な薬と言える。口の渇きや便秘も生じない。一方、食欲を出す傾向があり、体重増加に注意が必要。最初に飲む量は「トリプタノール(10)1T 寝る前」である。眠気のある薬は、主に睡眠が十分に改善し体調が持ち直したか、日中に眠気やだるさが残らないか、の二点を気にして調整する。大体、トリプタノール(10)1T~(25)2Tで決着する。なお、朝に眠気やだるさが持ち越す場合は、少し時間を早めて夕に飲むとよい。 トリプタノールと似た薬では、セロクエル、ルジオミール、リフレックスなどがある。セロクエルが一番無難、副作用が少ない。ただ、意欲を出す作用はわずか。ルジオミールやリフレックスは意欲を出す作用や睡眠の質を改善する作用が強いが(それでもトリプタノールに劣る)、その分、トリプタノールと同程度以上の副作用はある。

「ノリトレン」 

三環系、トリプタノールの中間代謝物。トリプタノールと比べて、意欲を出す作用は保たれているが、眠気を催す力はかなり弱まっている。結果、どちらかというとアモキサンに似た使用感である。表情が乏しく言葉数も少なく、見た目疲れた者に良い。効き方や副作用のプロフィール、分量調整の考え方も同じで、アモキサンの項目を参照ください。唯一、ノリトレンはアモキサンと比べて弱い。それはアモキサンが強力だからで、ノリトレンが弱いからではない。重症者だとアモキサンを選ぶが、そこまででなければノリトレンの方が良い。このあたりは重症度に合わせて選ぶ。最初に飲む量としては「ノリトレン(10)1T~(25)1T夕」である。大体、ノリトレン(10)1T~(25)4Tで決着する。意欲を出す作用は結構あるので、はじめ良いように見えても、1~2週間してイライラや躁状態が出てこないか、注意する。躁状態とは、元気のありすぎる状態で、延々と一方的にしゃべり続けたり、感情の起伏が激しくちょっとしたことでイライラしたり、疲れを知らず夜も寝ないで活動し続ける。うつ病とは真逆の状態であるが、うつ病から回復直後は躁状態を示しやすい。イライラや躁状態が出るようなら、意欲やエネルギーを出す薬はいったん中止する。ノリトレンに似た薬として、トフラニールがある。パワー的にも大体同じである。ほか、ノリトレンよりさらに弱いが、アンプリット、プロチアデンも似た傾向。アンプリットやプロチアデンはアモキサンを使うほど重症でない者、副作用を出さないことを優先したい状況*などでよく使う。
「副作用を出さないことを優先したい状況」
精神科受診が初回で薬の反応・感触がどうでるか分からない者、精神科に抵抗や嫌悪感がある者に対しては、初回からきつい薬を処方して副作用が出た場合、通院や治療が中断する。精神科に対する偏見・嫌悪感を助長し、精神科治療の機会を奪うことをしないという視点も重要である。
アンプリット

「アンプリット」

三環系。アモキサンやノリトレンより弱いが、大まかな傾向は似ている。見た目に疲れている者で、慢性的な肩こりや首筋の違和感がある者に使う。精神科受診が初回である者、精神科に抵抗や嫌悪感がある者に対しては、こういう薬から始める。口の渇きと便秘は少し出るが、それ以外の副作用は少ない。本来、眠気のない薬だが、あっている場合は、飲みだすと以前より深く寝る。疲労感や肩こり、体の痛みなども良くなる。最初に飲む量としては、「アンプリット(10)1T~(25)1T夕」で良い。大体は、アンプリット(10)1T~(25)2Tで決着する。分量調整はアモキサンと一緒。似た薬には、プロチアデンがある。アンプリットと同じ使い勝手。不思議なのは、「アモキサン>>ノリトレン>リリカ≒アンプリット≒プロチアデン」であるが、アモキサンが効かなくてノリトレンやリリカが効く患者がいること。精神科治療全般に言えることだが、とにかく強い薬を使えば効くのではなく、個々の重症度や特性に応じた使い分けをする必要がある。アモキサンの系統がよさそうなら、「マイスリー(5)0.5~1T」→「リリカ(25)1Tもしくはセロクエル(25)0.5T」→「アンプリット(10)1Tもしくはプロチアデン(25)1T」→「ノリトレン(25)1Tもしくはトフラニール(25)1T」→「アモキサン(25)1T」といった順で行く。ただ、状況に応じて途中、飛ばすことがある。また、イライラしやすい者はリリカかセロクエルまでとし、それ以上、薬を強めないこと。

「ルジオミール」

四環系抗うつ薬。割としっかり眠気がくる薬で、意欲やエネルギーを出す作用もそこそこある。イメージ的にはトリプタノール(あるいはリフレックス)と似ているが、睡眠の質を改善する作用、意欲を出す作用ともにトリプタノールに見劣りする。その割に、日中の眠気やだるさ、ふらつき、食欲増進など副作用はトリプタノールより多い。最初から出す事はないが、そこそこ強力ではあるので、3番手、4番手あたりで使う。添付文書上、緑内障に禁忌、けいれんに注意とある。 まず初めは「ルジオミール(10)1T夕」で使う。寝る前だと日中の眠気・だるさが出やすいので、できれば夕がよい。大体、ルジオミール(10)1T~(25)2Tで決着する。だるさが出なければ、ある程度まで増やすが、初期用量の10㎎でも眠気やだるさが残るならルジオミールはあきらめる。この系統の薬がよさそうな人は、「マイスリー(5)0.5~1T」→「リリカ(25)1Tもしくはセロクエル(25)0.5T」→「トリプタノール(10)1T」→「ルジオミール(10)1T」→「リフレックス(15)0.5T」の順で使う。分量、順序はもっとも慎重に行くケースの例であり、状況に応じてSKIPしてよいし、分量を2~2.5倍で始める事もある。
「四環系抗うつ薬」
ルジオミール、リフレックス、レメロン、テトラミド、テシプールなどある。四環系は眠気の強い薬で、睡眠を重点的に改善したい場合に使う。意欲やエネルギーを出す作用は三環系と比べて少なく、テトラミドやテシプールだとほとんどない。副作用は主に日中の眠気とだるさ、ふらつきであり、口の渇きや便秘はない。
リフレックス

「リフレックス、レメロン」

四環系。構造式・立体構造は、びっくりするほどテトラミドと似ている。しっかり眠気のくる薬で、意欲やエネルギーを出す作用もそこそこあるので、トリプタノールやルジオミール、特にルジオミールに似ている。口の渇きや便秘はないが、日中の眠気やだるさ、食欲増進が多少は出る。ただ、リフレックスは若年者だと相性が悪く、強烈なむずむず足やイライラ感がよく出る。(類薬のテトラミドも同様。) ひどい吐き気が出ることもある。また、単なる不眠症に出すと、躁状態を結構誘発する。とにかく、はじめから使うような薬ではない。リフレックスを使う状況としては、まず高齢者であること。そして、意欲やエネルギーの障害があること、不眠がそれなりにあること。選択を間違えなければ、睡眠の質を適度に改善し、よく眠るようになるので、倦怠感や体の痛みを回復する。ただし、リリカ、セロクエル、トリプタノールなどで感触を確認した上で使うこと。若年者に対してはよほどの難治例で、治療に困る状況を除いては使わない。最初に飲む量としては、「リフレックス(15)0.5T夕」が良い。不眠が改善するか、日中に眠気やだるさが残らないか、の二点をみて分量調整する。大体、リフレックス(15)0.5~2Tで決着する。体重増加は多少であれば気にしないが、飲んですぐにむずむず足・イライラ感、吐き気、頭痛などが出る場合は中止する。この薬を飲める人は、結構きつい薬でも大丈夫。効果も副作用も出にくいタイプの人である。大体の精神科薬は処方してよい。

「セロクエル」

もとは統合失調症治療薬だが、統合失調症にはまるで効果がない。しかし、大した副作用もなく不眠症に効くので、今では主にその用途で使う。割と眠気がくる薬で、睡眠の質を適度に改善する。ほかの薬と比べて、特有の眠気やだるさが残ること、ふらつくことは少ない。セロクエルは半減期が短く、体から抜けやすいので、こういった面での安全性が高い。高齢者でも安心して使える。意欲やエネルギーを出す作用は、あるにはあるが、わずかである。ただこれも、変にイライラ感を出すことがなく、逆にイライラや不機嫌を改善する薬としてよく使う根拠のひとつである。(もちろん、意欲やエネルギーの欠落した者に対しては、パワー不足である。)結果、セロクエルは表情の乏しさ、反応の鈍さは改善しないが、頑固な不眠症や、不眠からくる倦怠感、肩こりや頭痛、そこからくるイライラや不機嫌、息苦しさなどには有効である。最初に飲む量としては、「セロクエル(25)0.5T寝る前」が良い。大体、セロクエル(25)0.5~2Tで決着する。分量調整としては、0.5Tでも眠気やだるさが残るならセロクエルはあきらめるが、そうでなければ1~2Tまで増やし最適量を見極める。有効例では、当日からよく寝るようになって、体調も少し良くなり、不機嫌なども数日以内に改善する。合わない場合でも、眠気やだるさが残るぐらいで、ひどい副作用はまずない。(分量100㎎以上だと、体幹の傾きに注意を要す。) 添付文書上、糖尿病に禁忌だが、25㎎程度なら影響しない。セロクエルに似た薬として、フルメジンがある。フルメジンは不安感や耳鳴りに良い。副作用の点では手指の振戦(ふるえ)がある。また、睡眠を改善する作用はセロクエルに劣る。
リリカ

「リリカ」

もとは神経痛の治療薬だが、主に睡眠の質を改善し、体の痛みを取る作用がある。ほか、意欲やエネルギーを出す作用、食欲を出す作用、息苦しさを緩和する作用も少しある。大体は、飲み始めて3~4日ほどすると、以前より睡眠が深くなり、倦怠感や肩こり、頭痛などがとれてくる。それにあわせて不機嫌やイライラも緩和する。ほか、息苦しさやパニック発作、食欲不振にも効果がある。 最初に使う量は、「リリカ(25)1T夕」で、だるさやふらつきがなければ増やしてみる。大体はリリカ(25)1T~(75)1Tで決着する。食欲が出て体重が増えることに注意を要すが、吐き気など苦痛感のある副作用はない薬である。パワー的には弱い薬で。これぐらいでは全く効かない人も多い。ただ、様々な病状に有効でカバーする範囲が広く、ひどい副作用もないことから、初めに使う薬としては優れている。似た薬では、ガバペンやレグナイト、ドグマチール、セロクエルがある。ガバペンも神経痛の薬で、睡眠の質を改善し、痛みを取る作用がある。生じる眠気はリリカより強いが、意欲やエネルギーは出さないし、息苦しさも改善しない。食欲を出す傾向がある。レグナイトは成分的にはガバペンと同じだが、ガバペンより眠気やだるさが出やすい。利点は食欲を出さないこと。ドグマチールはリリカより弱いが、女性ホルモンを整えるので、月経前症候群や更年期障害に特に良い。意欲やエネルギーを出す作用はないが、息苦しさや不安感によく効く。セロクエルは息苦しさをとる作用と意欲を出す作用はリリカに劣るが、睡眠を改善する作用、不機嫌やイライラを鎮める作用はリリカより優れる。
マイスリー

「マイスリー」

ごく一般的な睡眠薬。昭和初期まで、睡眠薬と言えばバルビツール系など麻酔薬に類したものが主流で、大量内服すると死ぬこともあった。一方、現在主流のベンゾジアゼピン系睡眠薬はそういうことがなく、安全性は随分、高くなった。(用量用法は医師の指示を守ること。)マイスリーに代表されるベンゾジアゼピン系睡眠薬、さほど効果のある薬ではないが、多少、寝れる様にはなる。(軽症だとこれぐらいで治ってしまう。) ただ、意欲やエネルギーを出す作用、体の痛みを取る作用などはなく、病状が少し重くなると、力不足である。最初に使う量は、「マイスリー(5)0.5T寝る前」とする。理想的な量だと「飲んで15分ほどで少し眠気が出て、1時間せず寝付く。ふらつくことなく、起きた時も眠気やだるさは残らない。」となる。飲んだ直後に強い眠気を感じる、ふらつきや呂律不良がある、朝に残って眠たい、などは薬を減らす。逆に、全く眠気を感じなくて寝付くまで1時間以上かかる、寝付きはよいが何回も目が覚め熟睡感がない、寝る時間が4時間以下と短い、などは薬を増やす。マイスリー(5)0.5~2Tで決着する。似た薬では、レンドルミン、アモバンがある。レンドルミンはマイスリーより少し弱い。アモバンはマイスリーと同程度。ほか、ハルシオン、ロヒプノールもベンゾジアゼピン系だが、協力なので重症の不眠症に限定し使う。あとは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬だけでうまくいかない場合、ヒルナミン、テシプール、アタラックスP、セロクエルなどよく併用する。これらは眠気以外の余計な作用・副作用がなく、睡眠薬的な使い方にむいている。
パキシル

「パキシル」

SSRI。セロトニンを増やす薬。主に胸のつかえ感、それに伴う不安を改善する。一方、意欲やエネルギーを出す作用、眠気を出す作用はほぼない。副作用は吐き気や頭痛、下痢など。表情が乏しく反応が鈍い、見るからに疲れ切った病状の者に出すと、ひどい吐き気や頭痛が出てかえって病状を悪くする。リストカットや孤独感のある者にも悪く、焦燥感やリストカット、情緒の不安定さや自殺未遂を悪化させる。パキシルに限らず、SSRI・SNRIにはリストカットや孤独感を悪化させ、自殺未遂を誘発する特性がある。とにかく、セロトニン欠乏型*の不眠症患者に使う薬で、それ以外の病状に使うとかえって悪くする。最初に使う量としては、「パキシル(5)1T~(10)1T夕」とする。大体はパキシル20~30㎎で決着する。眠気はほぼない。飲むと数日以内に胸のつかえ感や息苦しさや長引く咳、それに伴う不安感が軽減する。一部に食欲増進や体重増加がある。
「SSRI」
通称、エスエスアールアイ。セロトニンを増やす系統の薬である。パキシル、イフェクサー、ジェイゾロフト、デプロメール、ルボックス、レクサプロ、サインバルタ、トレドミンなどある。SNRI(エスエヌアールアイ)もSSRIと一緒。
「セロトニンとドーパミン」
セロトニン欠乏型の不眠症患者は、病初期には、落ち着きがなく、愚痴とも不満ともつかない些細な訴えを一方的によくしゃべり、また感情的で表情にも富み、一見エネルギッシュに見える。相手をする側の人間のほうが、逆に疲れてしまうぐらいである。これは、ドーパミン欠乏型の不眠症患者が、表情も硬く笑うことがなく、口数も少なく、動作や反応・思考が鈍く、見るからに疲れ切ってしんどそうに見えるのとは真逆である。ただ、セロトニン欠乏は不眠症を伴うので、慢性的な不眠症はドーパミンを枯渇させ、最終的にはドーパミン欠乏型の不眠症患者と似てくる。